乳腺症と診断されています ~乳腺症とは~


 当院を受診される患者さんの問診票に“以前、乳腺症と診断された”と記入されていることがしばしばあります。特に20歳代と若年の患者さんの問診票によく見受けられるので、ちょっと驚いたりします。

 乳腺症は、正常乳腺が長年にわたって女性ホルモンに影響を受けながら増殖と萎縮を繰り返す間に、乳腺内の増殖している部分と、萎縮や線維化している部分が混在するようになる病態で、症状は乳房の疼痛や乳房の硬結(硬く触れること)、乳頭分泌など多彩です。一般的に35歳前後以降の成熟期女性に好発し、閉経後急速に減少します。生理的変化の一環であり、診断名として“乳腺症”とは言いますが、病気ではありません。適切な例えかはわかりませんが、顔にしわができるのは病気ではなく、生理的変化(加齢による変化)ですよね、それと同じように考えるとよいかも知れません。当院を受診された患者さんにも、このように説明してみるとわかってもらえるので、診察でもよくこの例えを使っています。

 時々、『乳腺症と診断されたので。』と心配で受診される方がいらっしゃいますが、上述したように生理的変化(年齢的に乳腺も変化してくる)ですので、特に治療が必要なものではなく、心配する必要はありません。また、20歳代それも前半の患者さんが乳腺症と言われたと受診されることがありますが、最初に書いたようにその診断には少しびっくりしてしまいます。乳腺が女性ホルモンへの反応を周期的に繰り返す結果、だんだん変化してくる病態ですから、一般的には30歳代後半以降に出現します。早い方で30歳前後の方もいらっしゃいますが、20歳代前半となってくると少しムリがあります。このような患者さんの一部は画像で診断されたわけではなく、痛みや乳腺のゴリゴリしたしこり?を訴え、その症状のみから乳腺症という診断がなされていたり、または超音波検診で画像所見上“乳腺症疑い”と診断されている場合もあります。ただし当院で超音波検査をすると、若年の患者さんの多くは正常範囲内の所見で、超音波検査でいくつかパターンのある乳腺症性変化を示唆する所見を確認できる方は少ないです。

 乳腺症と診断される場合、上述のように症状のみから診断されることがあるようですが、この場合、年齢的な変化である乳腺症による症状と正常乳腺によるそれとの境界は曖昧で、これが乳腺症の問題点の一つです。正常乳腺でも女性ホルモンに反応しながら、周期的に変化をしており、この中で生理的な痛みやゴリゴリ感が出現することは異常なことではありません。この正常な働きの中での症状と、その延長線上にある乳腺症の症状は類似しており、症状のみで区別するのは困難です。

 症状のみではなく、乳腺が増殖と萎縮を繰り返す中で変化したことを画像や病理所見から確認できた場合に乳腺症と診断することが多いです。当院でも、マンモグラフィや超音波検査にて画像上乳腺症性変化が確認できた時、またその部位に生検を行い“組織学的に”診断がついた患者さんに対し乳腺症と診断しています。乳腺症と診断されたからと言って、治療が必要な病気ではありませんので基本的に心配する必要はありません。

 乳腺症には様々なタイプがありますが、非浸潤癌との区別が困難なものや、硬化性腺症のように癌が含まれる可能性を考えなければいけない種類が一部にありますので、ケースにもよりますが限局性(ある部分のみに所見がある)に画像で乳腺症性変化を認めた時には生検(針生検や摘出生検)での確認が望ましいです。