乳がんにおける乳房再建について
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先週、シリコンインプラントするかお悩みの患者さんの話をしたのですが、その前に乳がん手術における乳房再建について基本的なことを書いたことがなかったですね。本日は乳房再建法について少し説明します。
まず乳房再建法には大きく“自家組織”と“人工物“による再建法があります。
自家組織による再建は、自分自身の組織を手術した前胸部に移植する方法で、かなり昔から行われています。主なものには、広背筋皮弁再建や腹直筋皮弁再建があります。例えば、広背筋皮弁再建では、背中の上部にある広背筋とその部分の皮下脂肪や皮膚を、広背筋を栄養している血管を付けたままで、切除した乳房のあった前胸部にローテーションして移植する方法です。生きた組織ですので、再建した乳房も柔らかいものになります。
ただ、病気ではない部分にもメスを入れることになりますから、そこをどう考えるかです。身体への負担はやはり少し大きくなります。
一方、シリコンインプラントによる再建については、通常のいわゆる“豊胸術”でなじみがあるかもしれません。豊胸術の場合はたいてい両側に入れると思いますが、乳がん手術においては現状、病気のある側だけに挿入することになります。挿入する位置は皮膚より遠い深い部分、乳腺組織や胸筋のさらに裏(肋骨側と言えばよいでしょうか。)に入れます。表面から触れた場合、皮膚や皮下組織、筋組織の層を通しての感触になりますから、インプラントの素材自身を直接触れるわけではありませんが、もともと乳房がとても柔らかい方であると、少し硬く感じるかもしれません。でも、この感触の違いについては患者さんの中では、かたちと比べるとそれほど大きな問題にはならないと思います。
また、メスを入れるのは乳がんのある乳房だけになりますから、身体への負担は自家組織移植と比べると少ないと言えます。ただし、人工物ですので感染などの問題、また一番問題になるのは患者さんが満足の得られる挿入ができるかどうかではないかと思います。外科医の腕の見せ所ですね。
それぞれにメリットやデメリットありますので、十分確認した上で再建を受けるようにしてくださいね。
[参考ページ]
日本乳癌学会 患者さんのための乳癌診療ガイドライン
Q24.乳房再建について教えてください。
http://jbcs.gr.jp/guidline/p2016/guidline/g4/q24/