マンモグラフィで脂肪性乳腺の場合の検査・診断について

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先日、60歳代後半の方が『きちんと調べてほしいです。』と当院を受診されました。
 3年前に自治体のマンモグラフィ検診で左腫瘤を指摘され、ご自宅近くの乳腺外科を受診、超音波検査を受けましたが特に異常ないと言われたそうです。その後、6~12か月に1回その施設で念のために経過観察を受けていましたが、これまで画像上変化なく、問題なしと説明されていました。
しかし、何となく気になって当院でも診てもらおうと受診されたそうです。

 検診時のマンモグラフィを含め、持参されたこれまでの画像を確認したところ、マンモグラフィ、超音波検査ともに乳癌を疑う所見でした。

 まず、3年前精密検査の判定になったマンモグラフィ画像では、この方は年齢的にも背景乳腺濃度の低い(全体的に黒っぽい背景)、いわゆる“脂肪性乳腺”でしたが、一部白く濃度の高い部分がありました。

乳腺濃度の説明

 私たちの乳腺組織は、年齢とともに萎縮していきます。乳房に含まれる乳腺組織(マンモグラフィでは白い)の細胞成分が縮小、減少してその部分は脂肪成分(黒い)に置き換わります。このように乳腺組織が萎縮している年齢にも関わらず、白く描出されるものがあった場合、かたちやその他の所見が良性っぽく見えても、悪性寄りに考えることは基本です。

 昔、『月夜に満月』という言葉をマンモグラフィを初めて勉強したときに学んだ記憶がありますが、これは丸いきれいな良性のしこりのように見えても、背景濃度が低い場合は悪性を考えなければいけないということを示したフレーズです。この方のマンモグラフィも、この例えと同じでした。

 また、この患者さんのように萎縮した乳腺について超音波検査する場合、より慎重に確認する必要があります。以前もこのブログで書いたかもしれませんが、萎縮していない乳腺をもつ、例えば比較的若い方の超音波画像と比べると、萎縮している乳腺は超音波検査ではどんより暗くてわかりづらい画像になります。
正直、慣れていない技師さんでは、病変をスルーされてしまうこともあると思います。

 実際、この方の持参された超音波画像にも10mm前後の乳がんのしこりが存在しましたが、これまで異常なしということになっていたようです。
 当院で針生検を行い、乳がんの診断になりましたが、幸いこの3年で少しずつしか変化はありませんでした。十分治療が可能な段階だったので、少しホッとしましたが、この患者さんは、やはりこの3年の経過についてとてもショックを受けておられました。

 このようなこともあったりしますので、(本来はひとつの施設で経過を診てもらうことが大切なのですが)一度別の施設で確認してもらうこともよいのかも知れません。

[参考ページ]
資料1 高濃度乳房について|厚生労働省(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000208392.pdf

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