日々の診療より見えてくる乳癌についての正しい知識、間違った理解

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【日々の診療より】

右胸のしこりと痛みを訴えて50歳代の患者様が受診されました。

既往歴に気管支喘息がありました。また乳癌の家族歴(母親)がありましたが、乳がん検診はほとんど受けたことがなく10数年前に一度マンモグラフィを受けたことがあるのみとおっしゃっていました。

視触診上、右外上部に45mm大の硬いしこりを触れました。しこりを押すと痛み(圧痛)も訴えました。視触診上乳癌疑いで検査を行いました。


【患者さんデータ】

50歳代女性、 気管支喘息の既往歴あり

乳癌の家族歴(母親)あり

しこりと圧痛あり


【検査結果】

マンモグラフィでは右外上部に分葉状腫瘤あり、腫瘤内部には悪性を疑わせる多形石灰化を認めました。超音波検査ではマンモグラフィと同じ部位にφ35mm大の不整形腫瘤、内部に高輝度スポット(石灰化)を認めました。生検で乳癌の診断となっています。


【乳癌の症状について】

私は日々乳腺診療をしていますが、最終的に乳癌と診断される患者様の症状を多い順にまとめると①自覚症状なし(乳がん検診で要精査になったので受診)、②しこりがある、③その他(血性乳頭分泌、最近出現した乳頭の陥凹、乳房皮膚の異常、乳房の硬化など)が主なものです。中でも当院では①、②がほとんどを占めます。

http://www.chielife.com/seiri/sikori.html


【アドバイス】

他の癌と同様に乳癌でも早期の段階では自覚症状が現れることはほとんどありませんが、この患者様のようにしこりが大きくなってきた場合には“しこり+痛み”“しこり+張り感”などしこりに付随した症状も出現してきます。

ここ数年、“痛み”の症状のみで乳腺外科を受診する患者様が急に増えている印象があります。また、最近では“痒み”で受診されることも多くなってきています。患者様から伺うと『痛い場合は乳腺外科へ』『痒い場合は乳癌かもしれない』とインターネットに書いてあるから心配になると言われます。私も患者様に言われて時々そのインターネット情報を読んでみたりしますが、悲しくなるくらい不確かな情報が氾濫しています。

特に、“痛み”や“痒み”はある程度の局所進行癌によって生じることもある症状の一つではありますが、もし直近で乳がん検診を受けているなら、通常その検診結果は“要精査”になっているはず

乳癌では(乳癌以外でも概ねそうですが)、自覚症状なし(乳がん検診で要精査になって見つかる乳癌)→進行する(しこりや血性乳頭分泌などの自覚症状が出てきて見つかる乳癌)の流れで発見されます。

もちろん、乳癌好発年齢層の患者様で検診をあまり受けたことのない方が、痛みのみを訴えて受診し、痛みの箇所と因果関係がはっきりしない部位に早期の乳癌が見つかることも経験としてないわけではありませんが、この場合どちらかと言うと“たまたまラッキーにも見つかった”と考えるほうが合点がいきます。

とにかく、マンモグラフィと超音波検査で大きな異常がない場合、症状が出現するような乳癌の存在を不安に考えるのはナンセンスです。心配であれば、一度乳腺外科で検査を受け異常なければ安心してくださいね。

当ブログについて

JR東京駅徒歩4分・地下鉄日本橋駅徒歩1分、AIC八重洲クリニック 乳腺外科のブログです。 乳腺外科医が、乳がんなどの乳房・乳腺の疾患について、わかりやすく解説いたします。
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