超音波検査の特性

 超音波検査の特性として、乳房が大きい場合(特に脂肪性分が多いタイプ)、乳房の深い部分(皮膚と反対の胸壁に近い部分)に存在する腫瘤は少ぼんやりしてしまうことがあります。当院の超音波検査機器は最新のものが導入されていますので、古いタイプの超音波機器より病変が検出し易いですが、やはり乳房が大きくて、胸壁に近い腫瘤像には気を遣います。

 先日、40歳代後半の患者さんが検診で両側乳腺腫瘤を指摘され要精密検査になったと受診されました。この方も、脂肪性分の多いかなり大きな乳房の方でした。指摘されたほとんどは嚢胞や、線維腺腫など良性所見と考えるものでしたが、その中で1つだけ、胸壁に近い部分にややぼやけた丸い腫瘤がありました。一見すると濃縮嚢胞を疑う良性の所見でした。血流信号や腫瘤の硬さを確認しても悪性を疑わせる所見はありませんでしたが、マンモグラフィでも描出されていること、また超音波のややぼやけた印象が気になったため、穿刺してみたところ液体成分が確認できなかったので(濃縮嚢胞であれば、液体成分が確認できることが多いです。)、針生検を実施したところ乳癌の診断でした。

超音波(エコー)検査のポイント
 超音波検査は小さめの乳房の方については、画像がクリアでわかりやすいことが多いですが、大きくかつ脂肪性分の多い乳房の場合には安易な画像のみの診断だけではなく、少し気になった場合はやはり穿刺などで確認することも必要であることを改めて認識させていただきました。 

 超音波検査が良い検査であると不確かな情報から理解されている方が多いと常々感じています。超音波検査はどんな方でも見やすいわけではありませんで、検診ではご自身の乳房のタイプに合わせて、マンモグラフィ、超音波検査を選ぶようにしてくださいね。

ご自身の乳房のタイプに合わせて選択

乳がん検診お申し込みバナー

低容量ピルと乳癌リスク

乳癌の家族歴がありますが低容量ピルを処方されています

 当院には場所柄か、比較的若い患者さんが受診されることが多いのですが、思いの外低容量ピルを内服されておられる方がたくさんいらっしゃいます。主に月経困難症、避妊などに対して処方されているようですが、伺ってみるとかなり長期間にわたって内服しており、よくわからないけど医師から処方されるからそのままずっと飲んでいるという方が多いように感じます。先日受診された30歳代の患者さんは、母親、母方叔母が乳癌の家族歴をお持ちの方でしたが、最初は月経痛がひどかったため低容量ピルを処方され、ここ10年ほどずっと内服しているそうです。特に月経困難以外の婦人科疾患はないそうです。
本人に伺うと『よくわからないけど、受診すると処方されるのでずっと飲んでいます。』とおっしゃっていました。

 他の皆さんも、もちろん初めは必要な症状などがあって処方を受けたのだとは思いますが、特にこの患者さんのように乳癌の家族歴が濃厚な若い方が、かなり長期間にわたって処方されていることも多く、私としてはヒヤヒヤしたりします。低容量ピルと乳癌リスクについては、様々な研究報告があることから、医師それぞれ、また立場によっていろんな考えかたがあるとは思いますが、乳癌治療の立場からは現時点では低容量ピル服用はわずかながら乳癌発症リスクを増加させる可能性あり、ただし含有されるエストロゲン量などを考慮すればリスクの増加を防げる可能性もあると考えられています。ただ、乳癌と診断された患者さんには禁忌(使ってはいけない)であることを考えると、少なくとも乳癌に対しては良くは働かないと考えることが妥当と言えます。

 先日触れましたが、更年期障害の治療でのホルモン補充療法と同様に、必要な範囲内でなるべく短い期間にとどめるように心がけ、漫然と内服しないことをおすすめします。薬剤はどのような種類に対しても言えることですが、主治医とメリットやデメリットにつき相談し、十分理解した上で治療を受けて頂きたいです。

薬剤は漫然と内服しないことをおすすめします

乳がん検診お申し込みバナー

マンモグラフィ検査も受けておいたほうが良い?

 先日、30歳代後半の方が当院の乳がん超音波ドックを受けに来られました。超音波の結果は異常なしでした。当日私からの説明付きでしたので、検査結果異常なしの旨説明する中で、日本の主に自治体で行う対策型乳がん検診では40歳以上2年毎のマンモグラフィ検診が推奨されていること、この患者さんの場合、しこりをつくるタイプの乳癌は超音波検査で検出しやすいこと、ただし乳癌にはしこりをつくらない“石灰化”としてのみ検出可能なタイプもあり、それは多くの場合マンモグラフィでしか検出できないことなど説明させていただきました。私としては30歳代でもそのような乳癌がないわけではなく、当院のような任意型検診をしている立場としては、マンモグラフィで石灰化がないかも時々は確認したほうが望ましいと思っています。
 

 
 ただし、特にドックはもちろんタダではありませんから、私から“絶対今日受けていったほうが良いです!”なんてちょっと言いにくいことでもあります。でも、この患者さんとはわりとざっくばらんにお話しが出来て、またかなり遠方の他県から来院していただいたこともあり、『せっかく来たから受けて帰ります。』と追加のマンモグラフィ検査を希望されました。そしてマンモグラフィを実施すると、非浸潤癌を強く疑う区域性石灰化カテゴリー4の所見を認めました。もちろん、患者さんも私もびっくりです。すぐに、石灰化の精密検査が可能な専門病院へ紹介させていただきました。癌疑いの所見が出るより出ないに超したことはありませんが、非浸潤癌はほぼ根治可能な段階ですので、今回説明をする中でうまくマンモグラフィ検査に繋がり、発見できて本当によかったと思いました。
 
 当院を受診される患者さんに伺うと、多くの方が『マンモグラフィより超音波の方が良い検査』と思っていらっしゃる印象があります。事実、ある程度の年齢以上でもマンモグラフィはほとんどしたことがなく、超音波検査のみで乳がん検診を長い間行っている方が割と多くいらっしゃることに私としてちょっと驚いてしまいます。会社などの一般健診にセットで含まれる乳がん検診には超音波検査が多いことにも起因しているのでしょうか。また、マンモグラフィは痛みを伴うことや、何らかの媒体でマンモグラフィでは見えないしこりもあるなどザックリ伝えられていることもあり敬遠されてしまうのでしょうか。少なくとも、わざわざ当院で乳がんドックを受けて頂いた方には、正しい理解を得て帰っていただけるような説明を心がけています。超音波検査はしこりが検出し易いということも、乳房の性質(脂肪性分が多いか少ないか)にもよります。超音波よりマンモグラフィの方がしこりが検出し易い乳房のタイプまた腫瘤のタイプもあります。
 
 乳がん検診は定期的に受けているが、これまで超音波検診しか受けてなかったというある程度の年齢の方には、次回は是非マンモグラフィも受けて頂くようおすすめします。せっかく検診を受けておられるなら、適切な検査方法を選択していただきたいと思います。
 

 

乳がん検診お申し込みバナー

嚢胞や濃縮嚢胞は異常所見?

 職場の一般健診のオプションで乳がん超音波検診を受けておられる患者様は多いと思います。その結果表でよく目にする“乳腺嚢胞”という所見がありますが、最近、またこの所見を心配し受診される患者さんが増えています。嚢胞について、何故こんなに心配されるかちょっとわからないですが、ある患者さんに尋ねてみたところ、『ネットで調べたら、嚢胞は癌の可能性もあると書いてあったから心配になって。。。』とおっしゃっていました。

 嚢胞とは、分泌物を運ぶ管である乳管が分泌物を溜めて拡張し袋状になったもので、若年者から閉経前後の年齢の方までに指摘される良性所見です。乳腺が分泌物を産生する年齢であれば指摘されることも多く、生理的な所見ですので治療の必要もなく心配する必要はありません。

 特に閉経期には乳腺症性の変化として、嚢胞が目立つようになる方もいらっしゃいますが、これも年齢相応の変化として問題ありません。(乳腺症については、過去のブログにその基本事項を触れていますので、読んでみてください。)

乳腺症と診断されています ~乳腺症とは~

 このように、単純に分泌物が溜まっただけの嚢胞を“単純性嚢胞”といいます。嚢胞は超音波検査では概ね“楕円形または円形の黒い像”(→無エコー腫瘤)として確認できます。

 これとは別に、“嚢胞”という単語が含まれていても、悪性病変の可能性があって精査が必要な所見がいくつかあります。
 主なものとして、

①嚢胞内腫瘍:良性腫瘍であれば嚢胞内乳頭腫など、悪性腫瘍であれば嚢胞内癌などがあります。単純な嚢胞ではなく、嚢胞の袋の中に充実部(細胞成分)が含まれるもの。超音波では無エコー腫瘤である嚢胞の中に、細胞成分を示唆する低エコーや等エコー部分が含まれます。

②小嚢胞集簇:小さな嚢胞が部分的に集まって認められる所見。多くは乳腺症でみられる所見ですが、非浸潤癌でも同様の所見を呈することがあります。

 嚢胞を含む所見でも、主に①②の場合は精査が必要になります。単純性嚢胞と①②の区別は特に難しくはありません。

 次に濃縮嚢胞ですが、これがもしかするとちょっと厄介かもしれません。単純性嚢胞が少し古くなると分泌物に含まれる蛋白成分等により、超音波では通常黒く見える単純性嚢胞が、ややグレーがかって見えるようになります(→低エコー腫瘤)。これを濃縮嚢胞と言いますが、これが以外とくせ者だったりします。
 以前、検診で嚢胞と指摘された方が、続けて受診して、2人とも乳癌だったというブログを書いたと思いますが、この2人の患者さんは、確かに超音波検査では一見濃縮嚢胞に見えなくもなかったですが(でもちゃんと見ればわかりますが。)、一つ一つの所見を丁寧に確認すれば、乳癌が一番に疑われる所見でした。低エコー腫瘤になってくると、良性の線維腺腫や乳癌の一部のタイプと類似していることがありますから、濃縮嚢胞っぽく見えるものには注意が必要です。心配であれば、一度乳腺外科を受診して確認してもらってくださいね。

乳がん検診お申し込みバナー

線維腺腫が大きくなってきた!?



 先日、右乳房のしこりが大きくなっている気がすると30歳代半ばの患者さんが受診されました。2017年夏頃より右乳房のしこりを自覚していたため、同年末に職場の一般健診を受ける際に乳がん検診も受けたところ、視触診と超音波検査で“線維腺腫疑い”12ヶ月後経過観察の指示だったそうです。そのためそのままにしていたものの、だんだん大きくなってきたので心配と受診されました。

 視触診では、確かに患者さんが気にされている右乳房下部に15mmほどの硬いしこりを触れました。マンモグラフィと超音波検査を実施したところ、マンモグラフィではしこりを触知する部位に背景乳腺濃度上昇を伴う区域性の石灰化(乳房をみかんに例えると、みかんの一つの房の範囲、三角形の範囲で広がるものを区域性と言います。)を認めました。癌の可能性が高い石灰化でした。また、超音波検査でもしこりを触れる部分に一致して広範な低エコー域と石灰化、またその内部にφ11mm程度の腫瘤様エコー像を認めました。乳癌の中で乳頭腺管癌と言われる組織型に典型的な所見でした。この病変以外に、左右ともに線維腺腫が疑われる所見はありませんでした。さっそく針生検を行ったところ、やはり乳癌の診断でした。

 先日、40、50歳以上の線維腺腫には気をつけましょうという内容のブログを書いた次の週にこの患者さんを経験したので、ちょっと驚きました。この患者さんについては、典型的な乳癌の所見でしたが、小さな線維腺腫の場合は乳癌との区別が困難な場合があり、また、それなりに大きくても、慎重に確認しないと、一見線維腺腫と似たような乳癌もあります。もし、“良性のしこり”と言われているが大きくなるようなら、早めに乳腺外科を受診して確認してもらってくださいね。

乳がん検診お申し込みバナー

更年期障害と乳房や乳首(乳頭)の痛み

 先週、更年期障害の治療に関して書きましたが、今回もそれに関連したことを書きます。

 私の乳腺外来に“乳房の痛み”や“乳首(乳頭)の痛み”を気にして受診される患者さんが結構な頻度でいらっしゃいます。特に閉経期前後の年齢の患者さんが多いように思います。そして、そのほとんどで痛みの原因となる乳腺外科的な異常がありません。治療が必要な乳腺外科的な病気により発生している痛みとすれば、ある程度進行した癌、または乳腺炎の可能性を考えますが、これらが存在するなら、マンモグラフィまたは超音波検査ですぐにわかります。

 逆に2つの検査で原因となる病変がない場合、その痛みは少なくとも乳腺外科的な問題ではなく、それ以外の可能性を考えるほうが妥当です。閉経期前後の年齢であれば、主に神経痛や筋肉痛など整形外科的な問題(積極的な治療が必要な症状ではないかもしれませんが)、あるいは更年期障害の不定愁訴の一症状である可能性を考えます。ごく希な例として、狭心症や心筋梗塞など積極的な治療が必要な病気の症状として“乳房が痛い”と受診される場合もあり、患者さんの背景によっては注意が必要ですが。

 更年期障害の不定愁訴には様々な症状があります。主な症状として倦怠感、動悸、のぼせやほてり、腰痛、肩こり、頭痛、耳鳴り、手足の冷えの他、乳房や乳首(乳頭)の痛みも代表的な症状です。当院の外来には、閉経期の患者さんで乳頭部のピリピリした痛みを訴えて受診される方が結構いらっしゃいます。マンモグラフィや超音波検査をしても、それに関連したような異常所見が認められることはまずありません。私が当院で診察をしているここ2年間で、乳房痛を訴えて受診された患者さんの中で、3人乳癌と診断した記憶がありますが、この3人とも乳がん検診を受けたことがなく、また痛みを訴える部位とはまったく違う部分に癌病変を発見しました。おそらくたまたま検診を受けたら見つかったということだと思います。

 もちろん、乳腺外科的な異常がないことを調べた上で、もしピリピリ感が気になるようであれば一度、産婦人科の先生に相談してみることをお勧めします。

乳がん検診お申し込みバナー

更年期障害の治療と乳癌


 乳腺外科の診療をしていると、『更年期の治療をしているのですが、乳癌になりやすいんですよね。』と質問されることがよくあります。

 私は更年期障害については専門外ですので、詳しいことは産婦人科の先生にお尋ねいただくことがよいと思いますが、一般的な更年期障害の治療方法には漢方薬やホルモン補充療法などの薬物療法があります。
 乳腺外科においては、乳癌の治療でホルモン療法(簡単に言えば、女性ホルモンの効果を下げる働き)を行うと、その副作用として更年期障害の諸症状が出現してしまうことが多くあります。一般的な更年期障害であれば、よほど症状が強い場合にはホルモン補充療法を選択するのでしょうが、乳癌で女性ホルモンの働きを下げる治療をしている患者さんに逆の作用をする補充療法は禁忌(やってはいけないこと)ですので、乳癌の患者さんには主に漢方薬治療で対応します。

 冒頭の更年期障害の治療をしていると乳癌になりやすいか?ですが、これは補充療法の内容により少し違いがあります。

 エストロゲンとプロゲステロンの2つのホルモンを併用して補充する場合にはわずかながら乳癌発症リスクが高くなると言われていますが、エストロゲンのみを補充する方法ではリスクは少なくとも高くはならないことが現時点でわかっています。また、5年未満の使用であれば、乳癌リスクは増加しないということも現時点で言われていることです。

 このブログにたどり着くくらい心配されている方には、まずご自身がどのタイプの補充療法をしているのか確認することをおすすめします。そして、乳腺外科医の立場から言わせていただけば、メリット、デメリットを主治医と十分話し合った上、漫然と治療を継続するのではなく、必要最小限で治療をすることがよいのではないかと考えます。

乳がん検診お申し込みバナー

40歳、50歳で線維腺腫と言われた


 線維腺腫は良性乳腺腫瘍の一つで、15~35歳の女性に最も多く認められます。通常は2~3cm程度まで増殖して止まることが多いですが、一部さらに増大することもあります。巨大線維腺腫(若年性線維腺腫)は10cm以上の線維腺腫で、全体の0.5~2%を占めます。急速増大するため、外科的切除が基本です。線維腺腫は典型的にはマンモグラフィで境界明瞭な腫瘤、超音波検査では楕円形や類円形の腫瘤として描出されます。

 ネットで調べると、『線維腺腫は癌化する』というふうに書かれているそうで、心配して受診される方を時々診察することがあります。実際にどのような内容で書かれているかわかりませんが、それはごくごくまれなケース、乳腺外科で毎日診療をしていてもほとんど遭遇することはありません。(データ上は0.02%程度との報告があります。)

 基本的に癌は癌で生まれ、線維腺腫は線維腺腫として生まれます。おそらく、ネットに書かれている“線維腺腫が癌化”のほとんどは、線維腺腫が本当に癌化したケースではなく、画像のみで線維腺腫と診断されていたものが、実は癌だっただけという流れを、『線維腺腫が癌化した』と誤解されているケースを指しているのではないかと推測します。(まれに両者が混在していることもあります。)

 ただし、定期的に検診を受けておられる40歳代以降の方で、これまで異常がなかったのに初めて“線維腺腫疑い”と指摘される場合には要注意です。
 中年期以降で初めて線維腺腫と指摘された場合は、画像上線維腺腫が疑われても、葉状腫瘍や乳癌の可能性も考える必要があります。小さい腫瘤の段階では治療が必要な葉状腫瘍や乳癌との見分けが困難な場合もあります。特に、葉状腫瘍は画像、さらには病理学的にも線維腺腫との鑑別が難しいことも多く、葉状腫瘍の40%程度が通常の針生検では線維腺腫などの良性病変として過小評価されるという報告もあります。

 中年期以降で増大傾向のある“画像上、線維腺腫疑い”病変については、画像で確認するだけではなく、生検によって確定診断をつける必要があります。また、葉状腫瘍の可能性が否定できない場合は、通常の針生検ではなく、吸引式組織生検や摘出生検などより多くのボリュームを採取できる生検方法を選択する必要もあります。いずれにせよ、中年期以降の新出した線維腺腫?には注意が必要です。

乳がん検診お申し込みバナー

乳がん検診の結果~マンモグラフィ検査:石灰化とカテゴリー

 先日、ある患者さんが検診マンモグラフィで『石灰化、B判定だったのですが心配で』と受診されました。この患者さんのマンモグラフィを確認すると、両側に数粒の中心透亮性石灰化(粒が大きめで中心部が透けている)、検診の判定通り明らかな良性所見でした。

 この患者さんも指摘されたように、マンモグラフィ検診でよく指摘される所見のひとつとして“石灰化”があります。簡単に言うと、カルシウム成分の沈着ですが、乳腺組織は分泌物を産生する組織ですから、分泌物の中に含まれるカルシウム成分が画像上認められることがあります。これまでマンモグラフィ検診を受けたことがある方なら、検診の結果表にそう言えば“良性石灰化”と書いてあったかなと多くの方が思われるのではないでしょうか。

 石灰化のほとんどは生理的な活動の中で生じるカルシウムの沈着(良性石灰化)ですが、同じ石灰化と言っても一部は乳癌により生じることがあります。乳癌による石灰化が疑われる場合には再検査となるわけですが、その良悪性を画像上どう鑑別するかと言うと、①一粒一粒の形(形状)と②広がっている範囲(分布)を総合的に判断してカテゴリー分けをします。画像上明らかな良性石灰化と言える場合はカテゴリー2、乳癌が強く疑われる場合にはカテゴリー5と、2~5の4段階に分類し、カテゴリー3以上で再検査が必要となります。

 ちなみにカテゴリー3はほぼ良性が疑われるが悪性の可能性も否定できないというような意味合いで、カテゴリー3の石灰化である可能性は概ね5-10%と言われています。(カテゴリー3をさらに経過観察対応と生検での確認を必要とする2段階に分けることもあります。)以前は、カテゴリー3以上の石灰化が見つかるととにかく生検で確認するということもありましたが、カテゴリー3の石灰化については、ある程度経過をみて変化するようなら生検をするという流れになってきています。

乳がん検診お申し込みバナー

乳がん検診は超音波が一番良い?

 先日、50歳代後半の方が当院の乳がん超音波ドックを受けに来院されました。かなり前にマンモグラフィ検診を受けたことがあり、その時に痛みが強かったこともあって最近は乳がん検診から遠ざかっていたそうです。

 超音波検査の結果は異常なしでしたが、超音波でみる正常乳腺構造からは、おそらくマンモグラフィ検診のほうがより適切な、脂肪成分がほとんどを占める乳腺(マンモグラフィでいう“脂肪性乳腺”)でしたので、今後はマンモグラフィを主体とした乳がん検診が望ましい旨説明させていただいたところ、『この前、テレビで超音波が良いって言ってましたよ。マンモは痛いですし。。。』とおっしゃいました。どのような説明を番組内でしていたかは不明ですが、この方の受け取り方は“超音波が一番良い検査”のようでした。

 自治体から送られてくる乳がん検診のクーポンは、その多くがマンモグラフィ検査を対象にしていると思います。マンモグラフィと超音波検査を選択できる自治体もチラホラありますが、現在多くの自治体ではマンモグラフィによる乳がん検診を行っていると思います。これは、確実な裏付けのもとに自治体で行う対策型検診では“40歳以上、2年毎のマンモグラフィ検診”が推奨されているからです。もし超音波検査が一番よい検査であるなら、当然超音波検診を行っているはずですよね。

 当院で行っている乳がんドック(任意型検診)でもそれに準じた方法でおすすめしており、40歳代以上ではまずはマンモグラフィをと説明しています。なぜマンモグラフィがよいかと言うと、“腫瘤”と“石灰化”という2つの主な異常所見を検出できるからです。ただし、前にも書いたと思いますが、マンモグラフィでは乳腺濃度※1によって“腫瘤”が見えにくいことがあり、マンモグラフィで腫瘤が見えにくい方については、それを補うために超音波検査を併用したほうがよいのではないかという流れになってきています。マンモグラフィで腫瘤が見やすい乳腺濃度であれば、マンモグラフィ検診のみで十分です。

 一方、石灰化検出は通常の超音波検査は不得意であり、今回超音波ドックのみ受けにきていただいた方に石灰化病変で見つかる乳癌がある可能性は否定できません。また、腫瘤についても、脂肪性乳腺の場合はマンモグラフィの方が見やすいこともあります。(超音波は脂肪が苦手です。)

 マンモグラフィは確かに痛みを伴う検査ですので敬遠されがちですが、とてもよい検査方法ですので、ある程度の年齢の方で超音波検診しか受けたことがない方がいらっしゃいましたら、次回は受けるようにしてくださいね。

 ※1マンモグラフィの乳腺濃度については、以前のブログ2017年7月に『マンモグラフィと背景乳腺濃度』に詳しく書いています。良かったら読んでみてください。

マンモグラフィと背景乳腺濃度

乳がん検診お申し込みバナー