マンモグラフィの乳腺濃度は異常所見ではありません

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マンモグラフィ検診の結果表を見せていただくと、たまに所見欄に“不均一高濃度”など乳腺濃度の記載があり、判定に“要精査”“経過観察”と書かれているものがあってびっくりします。所見とは、マンモグラフィ検査なら例えば“腫瘤”“石灰化”“局所的非対称性陰影”などが代表的なもので、ざっくり言うと、腫瘤(しこり)など本来ないものが見える場合につけるものです。これとは異なり、乳腺濃度とは2017年にもこのブログでも触れていますが、その人その人の乳房のキャラクターの違いを分類したもので、本来あるとかないとかの問題ではありません。わかりやすく言うと、人それぞれ皮膚の色に違いがあると思いますが、この違いがマンモグラフィでいう“乳腺濃度”です。どちらが良いとか良くないとかではありませんよね。キャラクターの違いですよね。一方、その皮膚に例えば傷や蕁麻疹があったとします。これがマンモグラフィでいう“所見”です。傷や蕁麻疹は(悪性・良性という問題ではありませんが)、本来ないものですよね。この説明で理解していただけたでしょうか?

従って、乳腺濃度を“所見”として要精査や経過観察とすることは出来ないのです。以前、ある自治体のマンモグラフィ検診でよかれと思い乳腺濃度を結果表に記載し始めたところ、多くの受診者さんが混乱してその自治体の乳腺外科を受診してしまい問題になったことがあります。ただ、私が当院に来てから確認できるだけでも、多くはありませんが同じような記載で心配になって受診される方がおられます。乳腺濃度は、本来は保険診療の対象となる異常所見ではありませんから、私ども保険診療をしているものとしても困ってしまう結果表です。

以前も書いたように、マンモグラフィの乳腺濃度が“高濃度乳腺”や“不均一高濃度”と濃度が高い場合には、腫瘤が検出しにくい場合があります。これについては、精査や経過観察の指示は誤っており、もし濃度が高いので検出しにくいことを伝えるなら、“超音波検査も併用することが望ましい”などサジェッションとしてのコメント記載とすべきものです。この前、“高濃度乳腺→要精査、乳腺外科受診を”の記載がされている結果表を持参、来院していただいた方も、何かの異常があるのかと思い、受診までの2週間心配されていたそうで、私が上記説明をし、超音波検査でも異常なかったので安心して帰られました。一般の方は要精査なんて書かれたら心配するのが当然ですね。もし、お手持ちの結果表に乳腺濃度について触れられているものがあり、“不均一高濃度”や“高濃度乳腺”と書かれている場合には、確かに腫瘤が分かりづらいことがありますので、次回の検診では超音波も受けることをおすすめします。

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