嚢胞や濃縮嚢胞は異常所見?
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職場の一般健診のオプションで乳がん超音波検診を受けておられる患者様は多いと思います。その結果表でよく目にする“乳腺嚢胞”という所見がありますが、最近、またこの所見を心配し受診される患者さんが増えています。嚢胞について、何故こんなに心配されるかちょっとわからないですが、ある患者さんに尋ねてみたところ、『ネットで調べたら、嚢胞は癌の可能性もあると書いてあったから心配になって。。。』とおっしゃっていました。
嚢胞とは、分泌物を運ぶ管である乳管が分泌物を溜めて拡張し袋状になったもので、若年者から閉経前後の年齢の方までに指摘される良性所見です。乳腺が分泌物を産生する年齢であれば指摘されることも多く、生理的な所見ですので治療の必要もなく心配する必要はありません。
特に閉経期には乳腺症性の変化として、嚢胞が目立つようになる方もいらっしゃいますが、これも年齢相応の変化として問題ありません。(乳腺症については、過去のブログにその基本事項を触れていますので、読んでみてください。)
このように、単純に分泌物が溜まっただけの嚢胞を“単純性嚢胞”といいます。嚢胞は超音波検査では概ね“楕円形または円形の黒い像”(→無エコー腫瘤)として確認できます。
これとは別に、“嚢胞”という単語が含まれていても、悪性病変の可能性があって精査が必要な所見がいくつかあります。
主なものとして、
①嚢胞内腫瘍:良性腫瘍であれば嚢胞内乳頭腫など、悪性腫瘍であれば嚢胞内癌などがあります。単純な嚢胞ではなく、嚢胞の袋の中に充実部(細胞成分)が含まれるもの。超音波では無エコー腫瘤である嚢胞の中に、細胞成分を示唆する低エコーや等エコー部分が含まれます。
②小嚢胞集簇:小さな嚢胞が部分的に集まって認められる所見。多くは乳腺症でみられる所見ですが、非浸潤癌でも同様の所見を呈することがあります。
嚢胞を含む所見でも、主に①②の場合は精査が必要になります。単純性嚢胞と①②の区別は特に難しくはありません。
次に濃縮嚢胞ですが、これがもしかするとちょっと厄介かもしれません。単純性嚢胞が少し古くなると分泌物に含まれる蛋白成分等により、超音波では通常黒く見える単純性嚢胞が、ややグレーがかって見えるようになります(→低エコー腫瘤)。これを濃縮嚢胞と言いますが、これが以外とくせ者だったりします。
以前、検診で嚢胞と指摘された方が、続けて受診して、2人とも乳癌だったというブログを書いたと思いますが、この2人の患者さんは、確かに超音波検査では一見濃縮嚢胞に見えなくもなかったですが(でもちゃんと見ればわかりますが。)、一つ一つの所見を丁寧に確認すれば、乳癌が一番に疑われる所見でした。低エコー腫瘤になってくると、良性の線維腺腫や乳癌の一部のタイプと類似していることがありますから、濃縮嚢胞っぽく見えるものには注意が必要です。心配であれば、一度乳腺外科を受診して確認してもらってくださいね。