せっかく併用検診受けたのに
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乳がん検診でマンモグラフィと超音波検査をセット(併用検診)で受ける方も最近では多くなってきたと思います。ただ、せっかく併用検診を受けておられるにも関わらず、無用な“要精査”判定で受診される患者様が目立ちます。
無用な“要精査”と書きましたが、本来併用検診できちんとした判定を受けていたら要精査にならないはずの所見であったにも関わらず、乳腺外科受診の指示をされている患者様が時々受診されます。
いくつか無用な要精査のパターンはありますが、その中で一番多くみられるのが、マンモグラフィで“局所的非対称性陰影=FAD”と指摘し、一方併用して受けた超音波検査ではマンモグラフィでFADを指摘した部位に所見がなかったにも関わらず、要精査として乳腺外科受診を指示しているパターンです。まず、マンモグラフィの所見の一つ“局所的非対称性陰影”とは、はっきりと“腫瘤=しこり”所見とは言えないが、“正常乳腺の一部かも知れないけど、しこりの可能性もあるかな?”という所見です。
マンモグラフィは正常乳腺組織(白)と脂肪組織(黒)がまだらに存在し(ほぼ白、ほぼ黒の方もいらっしゃいますが)、しこりも白いので、正常乳腺組織の一部が一見しこりっぽく見えることがあります。これを局所的非対称性陰影(しこりかも?)という所見で引っかけて、超音波で正常乳腺組織による陰影なのか、やはりしこりが存在するのかを確認します。
超音波で乳腺組織と判断できれば併用検診の基準では要精査としないはずですが、せっかく超音波検査を検診段階で行っているのに、要精査としている結果表を時々目にします。
日本乳癌検診学会よりすでに[マンモグラフィと超音波検査の総合判定マニュアル]が発行されており、その中にも総合判定基準が記載されています。総合判定とは、マンモグラフィと超音波併用検診を実施した場合、両検査の結果を踏まえた最終的な判定のことです。
私が患者様に見せていただいた結果表で多いのが、マンモグラフィと超音波検査をバラバラに所見をつけたまま、どちらかが要精査であればそのまま要精査になっているものです。おそらく、それぞれの画像で所見をつけたままで総合判定していないのだと思います。また、たまに患者様が『超音波で異常なかったが、念のために乳腺外科で超音波してもらって下さい。』と検診施設から言われて受診しましたという方もいらっしゃいます。
バラバラに所見をつけている場合は、総合判定基準を知らない(あり得ないとは思いますが)のか、また乳腺外科で念のため診てもらうために要精査にしているのかなと思います。
健診施設として乳がん検診を提供しているなら、このような指示をするくらい曖昧な検査は検診を受ける方の不利益になりますから避けてほしいと思ってしまいますが、患者様は優しい方が多く『問題なくてよかったです。』とおっしゃってくださいます。ただ、せっかく併用検診を受けているにもかかわらず、当院を受診する不必要な時間、金銭また精神的不安が発生するのですから、少なくともきちんと総合判定をつけておられる乳がん検診施設で受けていただきたいなぁと思います。
(私が当院で働き始めて1年ほどですが、今回のような所見パターンで受診され、当院の超音波では明らかな乳癌のしこりがあった患者様が1人いらっしゃいましたので、要精査となっていたら一応受診してくださいね。)