乳がん治療の化学療法について
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浸潤性乳がん(ステージⅠ以上)の治療方法は手術療法、薬物療法、放射線療法などをその患者さんの病状に合わせ組み立てて決定します。この治療方法を決める際に必要な情報は大きく2つあり、それがステージ(病期)とサブタイプです。
これについては、昨年ブログでその基本的なことを書きました。現在、基本的にはこの2つを総合的に判断して治療方針を決定しています。
ステージとサブタイプ
手術、放射線、薬物療法でもホルモン療法(内分泌療法)については、このステージとサブタイプからほとんどの場合迷うことなくその治療をするかしないか判断できますが、ただ、薬物療法のひとつである化学療法(一般的には“抗癌剤”と呼ばれています。)については、手術が終わって様々な病理所見もそろった後でも、化学療法を上乗せするかしないか判断に迷うことが時々あります。
そのような時に、保険診療の範疇の検査ではありませんが、主治医によってはOncotypeDXという検査を提案してくださることがあると思います。
OncotypeDX検査は、がん組織の21遺伝子の発現を調べることで乳がんの個別の性質を分析する検査です。がん遺伝子の分析結果から、再発スコア(0から100)を計算し、10年以内に再発する可能性、またその患者さんについて化学療法がどれくらい有効かの情報を提供するものです。再発スコアは高値であればあるほど再発リスクは高くなる、つまり化学療法の上乗せが望ましいことを示します。また、今年の2018年6月には米国臨床腫瘍学会でOncotypeDXについての新しい研究結果が発表されました。世界中で診断される乳がん患者の半数である、ホルモン受容体陽性(ホルモン療法有効)、HER2受容体陰性(抗HER2薬無効)、リンパ節転移陰性の患者さんの70%にあたる、再発スコア0から25の50歳を超える女性、および0から15の50歳以下の女性患者さんにおいては化学療法が省略可能であるという結果でした。
この結果はOncotypeDXを調べることで、その患者さんにとってより良い治療方法を選択できる大きな手助けになることを示すものと言えます。現時点では高額な検査であるため、提案されたからと言って患者さん皆さんがやってみようと思える検査ではないかもしれませんが、患者さん自身が化学療法に迷われている場合、OncotypeDX検査にて積極的な治療方針の自己決定の一助になるかもしれませんね。