乳房のしこり:乳腺嚢胞と嚢胞内腫瘍
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先日、40歳代の患者さんが『右のしこりが大きくなってきました。』と来院されました。
以前より右乳房にしこりを自覚しており、2、3か月前に他院受診し超音波検査を受けて『嚢胞なので問題ない。』と診断されましたが、その後増大しており心配になったそうです。
以前も書きましたが、“乳腺嚢胞”とは乳腺内で分泌物を乳頭まで運ぶ管(乳管)に分泌物が溜まり袋状になったもので(単純性嚢胞)、乳腺が働いている閉経後あたりまでの年齢の方であれば誰にでも認められる良性所見であり問題ありません。ただ、過去のブログで触れたように、“嚢胞”を心配して当院を受診される患者さんの中で、ごくたまにですが単純性嚢胞ではなく、悪性や良性の嚢胞内腫瘍だったり、その他の腫瘍性病変だったりすることがあります。
この患者さんについて、まず触診をしたところφ40mmくらいのしこりを右乳房に触れました。硬い印象はなく、弾力があるようなしこりでした。マンモグラフィでみると、その腫瘤は丸いかたちをしており、一見良性の印象ですが、濃度が非常に高かったことからは悪性を念頭に置く必要がありました。超音波検査では液体成分(液体)と充実成分(腫瘍細胞)を含む混合性腫瘤であることがわかりました。嚢胞内腫瘍(良性の嚢胞内乳頭腫や、悪性の嚢胞内癌などがあります。)の所見です。液体成分を吸引したところ、血性成分が確認でき、残った充実部より吸引式組織診を行ったところ、やはり嚢胞内癌の診断となりました。
これまでにも、検診で嚢胞と診断されたけど心配でとか、嚢胞と言われているしこりが大きくなったりとか気になって当院を受診されるかたで、1年に何回かは単純性嚢胞ではなく、乳癌を含む腫瘍性病変であったということを経験しています。確かに、嚢胞と言い切るには難しい“嚢胞のような”病変は結構ありますので、たまにはいつもと違う施設で検診を受けてみるのもよいのかもしれません。
[過去記事]
嚢胞が心配
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