乳腺腫瘤があると言われて
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乳がん超音波検査で“乳腺腫瘤”を指摘され、問題ないと言われたものの念のためと当院乳がん検診を受けに来られる方が最近多いです。わざわざ当院を受診していただくことはありがたいことなのですが、たまに説明に困ってしまうこともあったりします。
“腫瘤”とは、正常組織とは異なる何らかの塊があることを指します。その塊の内容が、細胞成分なのか液体成分なのかは問いません。このブログでもよく出てくる“嚢胞”=分泌液の溜まりでも所見としては腫瘤ですし、良性または悪性の腫瘍細胞が塊になっていても腫瘤です。ただ、嚢胞と画像で診断できるなら嚢胞と指摘するはずですので、一般的に腫瘤と指摘する場合には、その指摘した人は概ね何らかの腫瘍性病変を考えているとは思います。
最初に書いたように、この『他施設で指摘された腫瘤』というものが、私には時として厄介で、超音波検診で腫瘤を指摘されたということで、当院でも同じ超音波検査をしたものの、その腫瘤が100%見つかるかというとそうでもありません。何らの腫瘤像も指摘できないことがたまにあります。逆に、他院で何も指摘されなかったのに、当院では腫瘤を指摘するということもあります。腫瘤が存在するのか、また正常なのかということについては、超音波検査技師や医師の判断(力)の差によってその検査結果に差が出てしまうことが、残念ながら往々にしてあります。ある程度のスキルを持った技師や医師がいる施設では、そこまでの差は出ないと思いますが。当院は他院で実施した乳がん検診要精査で受診される方も多いのですが、その結果表や画像と当院での精密検査結果を比べてみると、そのことを痛感する毎日です。
ないものをあるということ、またきちんと腫瘤像が確認できてそれを良性だとか悪性の可能性があるとか説明することは容易いですが、他院であると言われたものをないと説明することは、正直なところ大変です。本人は“ある”と思っているわけですから。たぶんこの正常構造を腫瘤としたのだろうなと推測できることもありますが、まったくそんな推測もできないくらい正常だったりすることもあり、そんなときにはとても困ってしまいます。
当院の検査でないものはないとしか言いようがありません。もし疑問の場合は指摘した人にしかわかりませんので、実施した施設で確認いただくしかないのですが、当院では確実な判断能力を持ったスタッフしか検査はしていませんから、当院で検査を受けていただいた方には安心して帰っていただくように伝えています。
[参考文献]
日本乳癌学会 患者さんのための乳癌診療ガイドライン
Q7. 乳房のしこりの診断はどのようにするのですか。がん以外の乳房のしこりにはどのようなものが ありますか。
https://jbcs.gr.jp/guidline/p2016/guidline/g2/q07/
日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン
診療において超音波検査は乳癌検出手段として勧められるか。
http://jbcs.gr.jp/guidline/guideline/g5/g51710/