嚢胞が心配

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職場の一般健診のオプションで乳がん超音波検診を受けておられる患者様は多いと思います。その結果表でよく目にする“乳腺嚢胞”という所見がありますが、最近この所見を心配し受診される患者様がおられます。

乳腺嚢胞とは、乳腺内で分泌物を乳頭まで運ぶ管(乳管)に分泌物が溜まり袋状になったもので(単純性嚢胞)、誰にでも認められる良性所見であり問題ありません。この所見を心配して受診された患者様に対し、当院で再度超音波を実施してもやはり単純性嚢胞の所見のみで問題ないことがほとんどです。
ただ、直近の超音波検診で“乳腺嚢胞”と診断された2人の患者様が、当院で乳癌と診断されるケースを最近続いて経験しましたので紹介させていただきます。

[ケース1]

3ヶ月前の検診で“右乳腺嚢胞”問題なし、最近左乳房から左ワキ周囲の痛みが気になるため受診された40歳代の患者様です。既往歴や家族歴はありませんでした。
左腕を挙げた時に痛みを感じるという主訴でしたので、肩関節周囲炎など整形外科的な症状の可能性が高いと考えましたが、念のためマンモグラフィと超音波検査で確認しました。

[ケース2]

1ヶ月ほど前に受けた検診の判定表に“左乳腺嚢胞”良性所見で問題なしと記載されていたが心配なのでと受診された30歳代の患者様です。既往歴や家族歴はありませんでした。記載されている所見は問題ない旨説明しましたが、本人の希望もあり念のため超音波検査で確認しました。

2人とも数ヶ月以内に乳がん超音波検診を受けていて“嚢胞”の所見のみでしたが、結論からすると2人とも当院にて精査の結果、乳癌の診断となりました。いずれも組織型は非浸潤性乳管癌(DCIS)でした。ともに超音波画像では一見“濃縮嚢胞”(後述)に見えるのかも知れませんが、境界部が粗造な印象の腫瘤像が同じ腺葉に複数連なっており、まず第一に非浸潤癌を疑わなければいけない所見でした。(乳腺には分泌物をつくり、それを乳頭に運ぶ働きがありますが、乳頭から外側に向かってみかんの房のようなユニットが複数集まった構造をしています。このユニットを“腺葉”と言います。)

乳癌が乳房内に広がるパターンの一つとして、分泌物を運ぶ管(乳管)を這うように広がるものがあり、途中でいくつかの腫瘤が連なったような所見になる場合があります。ひとつひとつの腫瘤は確かに濃縮嚢胞にも見えないこともないですが、1つ1つの腫瘤をよく観察し、また全体像としても捉えるときちんと乳癌と診断できます。

嚢胞で心配される方の多くはもちろん単なる嚢胞と思いますので、むやみに心配する必要はありませんが、今回2人の患者様が同じような所見でたまたま当院を受診して、乳癌の診断になったことで、私も少し驚いたので紹介させていただきました。

“嚢胞”が含まれる所見いろいろ

①単純性嚢胞
単純に分泌物が溜まっているのみ。超音波検査では無エコー腫瘤。

②濃縮嚢胞
単純性嚢胞の蛋白などの内容物がやや混濁している。超音波検査では低エコー腫瘤として確認できる。ただし、画像では主に線維腺腫など充実性腫瘤との鑑別が難しいことも。(今回のケースはこれに該当するのかな?)

③嚢胞内腫瘍
嚢胞内に充実部分(細胞成分)が確認できる場合は嚢胞内腫瘍(嚢胞内癌を含む)の可能性があり精査が必要です。

④小嚢胞集簇
小嚢胞が集まって認められる所見で、主に乳腺症が疑われるが非浸潤癌でもみられる所見であり、これも精査対象です。

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AIC八重洲クリニック乳腺外科では、乳腺外科の外来診療と、乳がん検診を診療しています。

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