妊娠中の乳がん検診について
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当院の乳がん検診では、妊娠して何となく乳房が心配になってと受けに来られる方が目立ちます。妊娠期は乳房の張りなど、それまでと違う感覚が出てくるため気になってしまうのではないでしょうか。そのような方からよく質問されるのが、『妊娠中でも検査してよいのですか?』というものです。できるかできないかで答えるなら、できるという答えになりますが、少し雑な答えになってしまいますので以下に説明します。
まず、マンモグラフィについては、皆さんもご存じの通り放射線を使用した検査ですので、被爆の問題があります。ただし、放射線量としてはごく微量であり、例えば妊娠と知らずにマンモグラフィ検診を受けたくらいでは全く問題になりません。現在使用されているマンモグラフィ装置では、ほとんどが2mGy(グレイ)以下で撮影されています。妊娠初期の被爆による流産や胎児奇形のおそれが出てくる線量は100mGy以上ですから、妊娠中に何十回もマンモグラフィを撮影するというあり得ない状況で、ようやく影響が出てくるかもしれないというレベルです。心配はありません。ただし、他の多くの施設でもそうだとは思いますが、不必要な被爆は避けたほうがよいですので、当院でも乳がん検診においては、妊娠が判明している方に対してのマンモグラフィ検査は行わないことにしております。
一方、超音波検査については、産婦人科で妊娠中に行う検査であることからもわかるように、乳がん検診で問題なく行える検査方法です。人それぞれではありますが、一般的には授乳期と比べると妊娠期のほうが画像も判断し易いことが多いです。授乳期には乳腺組織が発達することから、非授乳期と比べて腫瘤等の病変と正常組織との境界がわかりにくくなってしまうことがあります。
もし、妊娠を契機に乳がん検診をしてみたいと思っておられる方には、産後落ち着いてからではなく、妊娠しているうちに超音波検診を受けてみることをおすすめします。またその場合、妊娠後期より妊娠初期のほうがより画像がわかりやすいです。