小さな線維腺腫は要注意?
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先日、40歳代の患者さんが左乳房のしこりに気付いたと受診されました。半年前に職場の一般健診を受けた際、乳がん超音波検診をオプションで受け、右乳房に8mmの線維腺腫を指摘されましたが特に問題ないと言われ、また左は異常なかったとのことでした。既往歴や家族歴はありませんでした。
早速マンモグラフィと超音波検査を実施したところ、いずれの検査でも右には所見なく(検診で指摘された線維腺腫も確認できませんでした)、触知される左外上部に15mm大の腫瘤を確認しました。マンモグラフィでは凸凹のある乳癌疑いの腫瘤を認め、また超音波検査でも角のある腫瘤があり、境界がぼやけている印象で、腫瘤の脂肪織浸潤(皮下脂肪内に腫瘤が食い込む様子)も認められ、また厚みがある腫瘤であるなど、ひとつひとつの所見はマンモグラフィと同様やはり乳癌を疑うものでした。
半年前の超音波検診で反対側(右)に指摘された線維腺腫なのか、またはここ半年で急に出現したかは不明ですが、半年前に確認された8mmの線維腺腫が急に消失して、逆の左に16mmの腫瘤が突然できたとは考えにくく、おそらくもともと左にあった腫瘤がこの半年で一回り大きくなったとしたほうが考えやすいです。
とにかく、左の腫瘤はマンモグラフィでも超音波検査でも乳癌の可能性が高い所見でしたので、すぐに針生検を実施したところ、やはり乳癌の診断でした。
乳癌は小さい腫瘤のときから画像で凸凹不整な形をして乳癌とわかりやすいものもありますが、小さい段階では良性っぽく見えるものも時々あります。
この患者様の乳癌は充実腺管癌という組織型でしたが、このタイプは特に小さい場合、一見きれいな丸い形で良性の線維腺腫に見えなくもなかったりします。
他にも、粘液癌や非浸潤性乳管癌など“一見”良性っぽくみえなくもない組織型がありますが、表面の構造や、形、内部の構造をより細かく慎重に確認すると、判別の大きな手助けになります。
明らかに乳癌である腫瘤より、やはり一見良性にみえる腫瘤ほどひとつひとつの所見を慎重に確認しなければいけないと再認識した一例でした。