授乳期にできるワキのしこりについて~副乳とは~
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授乳期の方が、ワキにしこりができたと訴えて時々受診されます。その原因としてまず1番に考えるものが“副乳”です。
人間の胎児期には、そのおなか側のワキから足の付け根にかけて乳腺堤milk lineと呼ばれる左右一対の乳房のもと(表皮隆起)ができます。猫や犬ではこのmilk lineに複数対の乳房を持っていますよね。これは猫や犬が多産であることが大きな理由で、多くの表皮突起が退縮せずに乳房として発達するためです。
一方、人間は多産ではありませんので、最終的に胸部の一対のみが残り、他の部分は退縮しています。ですので、私たち人間の乳房は通常一対のみ認められますよね。ただし、この退縮が不十分であると、副乳として残存します。
副乳は、成人女性の1~6%程度に認められ、主に前胸部や腋窩、また腹部に出現します。両側性、片側性いずれの場合もあり、乳頭を認めることもあります。副乳には、乳房と同じように乳腺組織が存在するので、ここから乳腺症や線維腺腫などの良性病変、また乳癌が発生することもあります(副乳内癌)。
授乳期の患者さんがワキにしこりと感じるのは、乳房と同様に腋窩の副乳の乳腺組織も発達していわゆる“張った”状態になるためです。痛みを感じることもあります。それ自体は治療が必要な病気ではありませんので、超音波検査を受けて副乳が存在するだけであれば、特に問題ありません。
乳がん検診においては、通常両側腋窩も確認するとは思いますが、副乳を指摘されたことがある方は、念のため乳がん検診を受ける際に“副乳があると言われました!”と伝えて、腋窩もきちんと観察していただくようおすすめします。前述したように、副乳内に病変が生じることがありますので。