更年期障害の治療と乳癌
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乳腺外科の診療をしていると、『更年期の治療をしているのですが、乳癌になりやすいんですよね。』と質問されることがよくあります。
私は更年期障害については専門外ですので、詳しいことは産婦人科の先生にお尋ねいただくことがよいと思いますが、一般的な更年期障害の治療方法には漢方薬やホルモン補充療法などの薬物療法があります。
乳腺外科においては、乳癌の治療でホルモン療法(簡単に言えば、女性ホルモンの効果を下げる働き)を行うと、その副作用として更年期障害の諸症状が出現してしまうことが多くあります。一般的な更年期障害であれば、よほど症状が強い場合にはホルモン補充療法を選択するのでしょうが、乳癌で女性ホルモンの働きを下げる治療をしている患者さんに逆の作用をする補充療法は禁忌(やってはいけないこと)ですので、乳癌の患者さんには主に漢方薬治療で対応します。
冒頭の更年期障害の治療をしていると乳癌になりやすいか?ですが、これは補充療法の内容により少し違いがあります。
エストロゲンとプロゲステロンの2つのホルモンを併用して補充する場合にはわずかながら乳癌発症リスクが高くなると言われていますが、エストロゲンのみを補充する方法ではリスクは少なくとも高くはならないことが現時点でわかっています。また、5年未満の使用であれば、乳癌リスクは増加しないということも現時点で言われていることです。
このブログにたどり着くくらい心配されている方には、まずご自身がどのタイプの補充療法をしているのか確認することをおすすめします。そして、乳腺外科医の立場から言わせていただけば、メリット、デメリットを主治医と十分話し合った上、漫然と治療を継続するのではなく、必要最小限で治療をすることがよいのではないかと考えます。