良性腫瘍「葉状腫瘍」とは
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乳腺にできる良性腫瘍にはいろいろな種類があります。その中で、線維腺腫はもっとも多い良性腫瘍のひとつで、超音波検診を受けると結果表によく記載されており、皆さんも一度は聞いたことがあると思います。
この線維腺腫と画像上、また組織学的にも類似した良性腫瘍に葉状腫瘍があります。両者の相違点としては、線維腺腫は15~35歳と比較的若年者に多いですが、葉状腫瘍は35~55歳のやや高年齢層に多く、また急速に増大することがあります。
線維腺腫は基本的に良性ですが(以前も書いたように思いますが、ごくごくまれ0.02%程度の癌化の可能性はあります。)、葉状腫瘍は良性、境界型(ボーダーライン)、悪性に分類され、その50%以上は良性ですが、局所再発が良性でも20%以上、ボーダーラインや悪性になるとその割合はより高くなります。
葉状腫瘍と診断された場合は原則外科的切除となりますが、局所再発を繰り返すたびに悪性度が上がるとも言われており、切除の際には局所再発を防ぐため、腫瘍に十分なマージン(のりしろ)をとって切除する必要があります。
一方、線維腺腫も4~5cm大、または急速増大する場合には切除しますが、基本的には腫瘍部分を切除すればよいので、同じ大きさの腫瘤でも、葉状腫瘍と線維腺腫では切除範囲が違ってきます。
悪性葉状腫瘍は25%程度あると言われていて、この場合は肺や骨などに遠隔転移することもあります。治療方法は、現時点では確立したものがあるわけではありませんが、肉腫に準じた化学療法、あるいは放射線療法などが選択されます。
確定診断をするにあたっては、一般的に用いられる針生検では葉状腫瘍の40%程度が良性病変として過小評価されていると言われており、多くは線維腺腫と診断されます。より多くのボリュームを採取できる吸引式組織診や外科的な摘出生検でようやく正確な診断が可能な場合があります。当院でも、葉状腫瘍の可能性が否定できない場合は、針生検ではなく、吸引式組織診を行うようにしています。