40歳、50歳で線維腺腫と言われた
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線維腺腫は良性乳腺腫瘍の一つで、15~35歳の女性に最も多く認められます。通常は2~3cm程度まで増殖して止まることが多いですが、一部さらに増大することもあります。巨大線維腺腫(若年性線維腺腫)は10cm以上の線維腺腫で、全体の0.5~2%を占めます。急速増大するため、外科的切除が基本です。線維腺腫は典型的にはマンモグラフィで境界明瞭な腫瘤、超音波検査では楕円形や類円形の腫瘤として描出されます。
ネットで調べると、『線維腺腫は癌化する』というふうに書かれているそうで、心配して受診される方を時々診察することがあります。実際にどのような内容で書かれているかわかりませんが、それはごくごくまれなケース、乳腺外科で毎日診療をしていてもほとんど遭遇することはありません。(データ上は0.02%程度との報告があります。)
基本的に癌は癌で生まれ、線維腺腫は線維腺腫として生まれます。おそらく、ネットに書かれている“線維腺腫が癌化”のほとんどは、線維腺腫が本当に癌化したケースではなく、画像のみで線維腺腫と診断されていたものが、実は癌だっただけという流れを、『線維腺腫が癌化した』と誤解されているケースを指しているのではないかと推測します。(まれに両者が混在していることもあります。)
ただし、定期的に検診を受けておられる40歳代以降の方で、これまで異常がなかったのに初めて“線維腺腫疑い”と指摘される場合には要注意です。
中年期以降で初めて線維腺腫と指摘された場合は、画像上線維腺腫が疑われても、葉状腫瘍や乳癌の可能性も考える必要があります。小さい腫瘤の段階では治療が必要な葉状腫瘍や乳癌との見分けが困難な場合もあります。特に、葉状腫瘍は画像、さらには病理学的にも線維腺腫との鑑別が難しいことも多く、葉状腫瘍の40%程度が通常の針生検では線維腺腫などの良性病変として過小評価されるという報告もあります。
中年期以降で増大傾向のある“画像上、線維腺腫疑い”病変については、画像で確認するだけではなく、生検によって確定診断をつける必要があります。また、葉状腫瘍の可能性が否定できない場合は、通常の針生検ではなく、吸引式組織生検や摘出生検などより多くのボリュームを採取できる生検方法を選択する必要もあります。いずれにせよ、中年期以降の新出した線維腺腫?には注意が必要です。