Allergan 社ブレスト・インプラントおよび組織拡張器の自主回収について
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少し前、シリコンインプラントによる乳房再建に関連したリンパ腫が憂慮すべき問題になっていることについて書きました。
シリコンインプラントによる乳房再建と血液のがんについての問題
その問題について、7月には米食品医薬品局(FDA)は米アラガン社の乳房インプラントの一部製品を全販売地域を対象に自主回収(リコール)すると発表しました。このメーカー乳房インプラントは、日本では乳癌の患者さんに保険診療で乳房再建する場合に使用されています。リコールの対象となっているのは表面がざらざらした『テクスチャードタイプ』と言われるもので、これが先日お話ししたリンパ腫との関連性を指摘され始めている種類です。
これを受けて、日本国内でも7月25日より同製品の自主回収が始まっていることから、乳がん手術を行っている多くの施設ではその対応が開始されました。自主回収されているアラガン社のテクスチャードタイプは、すべてではないものの乳がんにおける乳房再建で使用される大多数を占めているものです。ですので、人工乳房再建をすべて中止している施設、また使用可能な他の種類『スムーズタイプ』へ移行しようとしている施設と対応は各施設によって様々です。乳がんの患者さんで、これまでにシリコンインプラントによる乳房再建を受けておられる方で、手術した施設にまだ確認をしていない方は、早めにその施設にご相談ください。
数年前、日本でシリコンインプラントによる乳房再建が保険適応になって以降、その手術件数は急増しました。それまでは乳がんの患者さんに対するこの再建方法は自費でしたから、高いお金をかけて受ける患者さん、また金銭面や手術の負担などを考えて断念する患者さんは多かったと思います。この数年はこのような患者さんの精神面も含めた負担を少しは和らげることができていたかと思うと、今の状況は非常に残念です。しかし、医療にとって安全性は第一ですので、この問題がきちんと解決された上で、よりよい選択肢が現れることを願っています。この問題については、また何かあったら報告しますね。
[参考ページ]
乳房再建用ティッシュエキスパンダーの手術を受け、ブレスト・インプラント(ゲル充填人工乳房)による乳房再建を待機されている方へ
ブレスト・インプラント(ゲル充填人工乳房)による乳房再建を希望されている方へ
ブレスト・インプラント(ゲル充填人工乳房)による乳房再建を受けた方へ
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