乳腺腫瘤に対しての細胞診と針生検(組織診)について
Posted on
当院の問診票には“生検”をしたことがあるか確認する欄があります。そこに○があった場合、受けたのは針生検なのか、または細胞診なのか確認するのですが、正確に答えられる方は少なくて、ほとんどの患者さんが『針を刺してする検査』くらいの認識です。
どちらの検査を自分が受けたのかわからない方が多いように思います。よくよく話しを聞いてみると、多くの方は細胞診を受けている印象で、針生検を受けた方が圧倒的に少ないです。
当院では乳腺腫瘤に対して細胞診をすることはほとんどなく、乳がんの可能性を考えるなら、必ず針生検(または吸引式組織診)を行っています。細胞診と針生検の違いについては、今年の初めにこのブログで書きましたが、針生検では小さなキズができるなどデメリットもあり、絶対どちらがよいと言えるものではありませんが、病理診断の正確さからすれば、圧倒的に細胞診より針生検の方が正確です。
なぜなら、採取できる細胞、組織のボリュームが異なるため(針生検の方がかなり多い)、病理診断に必要な情報量も多くなるからです。また、針生検は太めの生検針でターゲットを採取するので、よほどのことがない限り“かすって採れなかった”ということはないと思いますが、細胞診の場合は、皆さんが思い浮かべるような注射器の針で病変の細胞を吸引しながら採取するので、そもそも必要量の細胞が採れなかったり、また偽陰性(false negative、ざっくり言えば悪性なのに良性と診断されること)になってしまうこともあります。
乳腺腫瘤の再検査― 生検について
時々私が経験するのは、他院で細胞診をして『特に問題ない』や『良性です』と言われていたが、気になってとかしこりが大きくなってなどと受診される方で、画像検査をしてみると、low grade DCISや嚢胞内癌などを疑う病変のある患者さんです。言い方は雑かもしれませんが“おとなしいタイプの乳癌”を細胞診で良性と言われていたと受診される方です。画像上、そのような乳癌を疑う所見であれば、細胞診では正確に判断できないことも多く、少なくとも針生検、場合によってはもっとボリュームを採れる吸引式組織診を行う必要があります。
[参考文献]
日本乳癌学会 患者さんのための乳癌治療ガイドライン
Q8.穿刺吸引細胞診や針生検はどのようなときに必要な検査ですか。
http://jbcs.gr.jp/guidline/p2016/guidline/g2/q08/
細胞診・組織診(生検)とは / Pfizer がんを学ぶ
https://ganclass.jp/kind/breast/biopsy.php