巨大乳腺腫瘤について
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2018年も残すところ数日ですね。昨年末、偶然発見したしこりのことを書きましたが、
早いものです。 今年のブログの最後に何を書こうかなと思っていたところ、昨年と同様に乳房に大きなしこりを訴えて受診された方がおり、『去年と同じだ!』と印象的でしたので少し触れたいと思います。
患者さんは40歳代後半の方で、かなり前より右乳房に小さなしこりがあるのは自覚していたもののそのままにしておられたそうです。1年ほど前から急に大きくなって、最近では痛みも感じるようになったと受診されました。視触診では右乳房全体を占める12cm大の巨大腫瘤を認めました。マンモグラフィと超音波検査では、乳癌というより線維腺腫や葉状腫瘍の可能性を考える所見でした。
病理診断の難しい場合がある葉状腫瘍の可能性がありましたので、通常の針生検ではなく、それよりボリュームの採れる吸引式組織生検を行ったところ、結果は線維腺腫でした。
線維腺腫は15~35歳くらいが好発年齢の良性腫瘍で、通常は2~3cmになるとその増殖は止まります。ただし、巨大線維腺腫といって、10cm以上になるものが0.5~2%程度あり、これは通常思春期や20歳代までに多いことから“若年性線維腺腫”とも言われています。
この患者さんは40歳代後半ですので、巨大線維腺腫としてはやや年齢が高いです。線維腺腫がある程度の年齢以上で急速増大することが無いわけではありませんが、やはり非典型的と言えます。一方、葉状腫瘍は30~55歳くらい、線維腺腫と比べてやや年齢の高い女性に多い腫瘍です。また、1cm程度のこともありますが、急速増大してかなり大きくなることもあります。私が手術したことがある最大の葉状腫瘍は20cmをはるかに超えていました。前述したように葉状腫瘍は病理診断が困難な場合があり、針生検や吸引組織診断では線維腺腫と過小評価されていたものの、外科的切除で全体像を確認した結果葉状腫瘍と最終診断される場合もありますので、この患者さんも最終診断が異なることもあるかもしれません。ただ、この患者さんはおそらく乳癌だと思ってかなり心配されていらっしゃいましたし、検査をした私たちも気になっていたので、昨年同様ひとまず安堵しました。
この1年、私が日々経験して思ったことなど拙い文章で書いてきましたが、読者さんに楽しんでいただけていたら幸いです。時々、『このブログを読んで来ました!』と受診していただくことがあり、私もとても嬉しいです。また、来年も皆さんのちょっとした手助けになるような内容を発信していきたいと思っていますので、宜しくお願い致します。
年末にかけて一段と寒くなるとのこと、体調管理には十分気をつけて、明るい新年をお迎えください!
[参考ページ]
MSDマニュアル 家庭版
乳房の線維腺腫
日本乳癌学会 患者さんのための乳癌診療ガイドライン
Q8.乳がん以外の乳房のしこりには,どのようなものがありますか。
https://jbcs.xsrv.jp/guidline/p2019/guidline/g2/q8/
当院サイトにも説明しております。ご参照ください。
乳腺線維腺腫 とは
https://breast-imaging.mri-mri.com/doc/sick/nyusensenisenshu/