マンモグラフィと背景乳腺濃度

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まず、一口に“乳がん検診”と言っても、大きく2種類が存在します。

①対策型検診・・・集団全体の死亡率減少を目的として実施、公共的な予防対策として主に自治体単位で行うもの

②任意型検診・・・個人のがんの可能性を確認する検査、当院での乳がんドックを含む

まずは、対策型検診とマンモグラフィの背景乳腺濃度について説明します。

現在、日本における対策型乳がん検診については『40歳以上の女性、2年毎のマンモグラフィ検診』が推奨されています。この方法で乳がん検診を受けた場合、メリットがデメリットを上回る(乳癌による死亡率を下げる>被ばくや不必要な生検実施などの不都合)ことが研究データ上明らかであるためです。

ただし、マンモグラフィでは“しこり”をつくるタイプの乳癌が検出しにくい場合があります。これはマンモグラフィの“背景乳腺濃度”の違いによります。

ちなみに“石灰化”でみつかるしこりをつくらない(ことが多い)乳癌はマンモグラフィでの検出が容易です。

知っているようで知らない マンモグラフィーの基礎②

乳房内には乳腺組織と脂肪成分(所謂“脂肪”です)が入り交じって含まれますが、マンモグラフィの背景乳腺濃度の違いはこの乳腺組織と脂肪成分の含まれる割合の違いによって生じます。

簡単に言うと、

乳腺組織多い→白く映る(濃度高い)→癌のしこりも白いのでわかりにくい

脂肪成分多い→黒く映る(濃度低い)→小さな白いしこりでもわかりやすい

の違いです。

脂肪性乳腺や乳腺散在の場合、マンモグラフィのみで小さなしこりから石灰化まで検出が容易ですが、高濃度乳腺ではマンモグラフィのみでは小さなしこりの検出が困難で、超音波検査も併用することがベターではないかと言われつつあります。不均一高濃度も高濃度乳腺に準じます。

現在はまだ高濃度乳腺=マンモグラフィ+超音波併用検診推奨とはなっておりません。超音波を推奨するためには自治体でその体制が整っていないといけませんが、現状まだその体制を整えることの難しい自治体が多いことも事実です。実際、一部の自治体などでは問題点など議論されているところではあります。

しかし、おそらく超音波検診の体制が整えば、近い将来その方向に向かっていく流れであることには間違いないと思います。

一般的に大きく誤解されていることであり、別項『超音波検査についての誤解』でも少し触れていますが、マンモグラフィで高濃度乳腺だからしこりが見つけにくい→超音波がよいではありません。上述したように、乳癌は“しこり”で見つかるタイプだけではなく、“石灰化”でみつかるものもあり、これらどちらも検出可能なマンモグラフィが第一選択です。

また、当院で行っているような任意型検診は個人個人の希望により若年者も含めて実施するものですので対策型とは考え方が異なりますが、上記の対策型検診方法をご理解の上検査方法を選択することをお勧めします。

ちなみに、当院乳がんドックのマンモグラフィ結果表にはこの背景乳腺濃度を記載し、次回からより良い検診方法を選択していただくよう努めております。

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